ナルキン心理学

心理機能のバランス – 長所に偏ることで生じる問題

MBTI心理学で性格判断すると、自分自身の長所・短所を知ることができます。次のステップは、「それを受けて、どのように自分の人生をより良くしていくか」になるでしょう。

MBTIでは、長所・短所を8つの心理機能(認知機能)を用いて解説します。この記事では、心理機能のおさらい(心理機能のペア等)と、長所(第一機能)に偏ることで生じる問題について解説していきます。

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おさらい「心理機能とは」

心理機能とは、認知機能とも呼ばれ、「情報の取得・判断をする、人に備わった機能」のことを指します。心理機能(認知機能)は、大きく分けると外向機能・内向機能に分けられ、全部で8種類の心理機能(認知機能)が存在します

8種類の心理機能(認知機能) (クリックで表示)

心理機能は、認知機能と同じ意味です。一般に認知科学において、認知機能は生物が対象の知識を得るために、外部の情報を能動的に収集し、それを知覚・記憶し、さらに推理・判断を加えて処理する機能」と定義されます。

主な認知機能
記憶力ものごとを忘れずに覚えておき、必要な時に取り出す力
計画力その場の状況に合わせて最適な計画を考え、準備し、行う力
注意力大切なことや必要なことに気づいて入手し、意識を集中させ、持続する力
見当識現在の年月や時刻、自分がどこにいるかなど基本的な状況を把握している力
空間認識力物体の位置・方向・姿勢・大きさ・形状・間隔など、物体が3次元空間に占めている状態や関係を、すばやく正確に把握、認識する力

*上記の表は、認知機能の見える化プロジェクト『認知機能 – 概説 –より引用及び筆者改変した物です

かの有名な心理学者のユングは、著書「タイプ論(Psychological Types)*」において心理機能(認知機能)を4種類仮定しました
*タイプ論(Psychological Types)」は、日本語訳されているので、気になった方は以下のリンクより内容を確かめてみてはいかがでしょうか↓

その4つの心の働き(機能)には、[感情型(F型)、思考型(T型)]、[感覚型(S型)、直観型(N型)]があります。また、[感情型(F型)、思考型(T型)]意思決定(判断)機能[感覚型(S型)、直観型(N型)]情報収集(知覚)機能と呼びます。以下それぞれ具体的に説明します。

臨床心理学用語事典心理的機能(思考・感情・感覚・直観)」より引用開始(一部筆者改変)

灰皿を例にとった例え

思考、感情、感覚、直観の4つのタイプの物事の捉え方の説明として、「瀬戸物の灰皿をどう捉えるか」という例があります。それは以下のようなものです。

  • 思考
    ーこれが瀬戸物という部類に属すること、その属性の割れやすさなどについて考える。
  • 感情
    ーその灰皿の感じがいいとか悪いとかを決める。
  • 感覚
    ーその灰皿の形や色などを的確に把握する。
  • 直観
    ー見た途端、幾何学の円に関する問題の解答を思いつくなど、そのものの属性を越えた可能性をもたらす。

引用終了

人は、この機能を使って世界を認知し、物事に取り組みます。(MBTIでは、この心理機能の発達のバランスで、得意・不得意が決まり、性格タイプが16に分類されます)

また、ユングは、内向型(I)・外向型(E)という概念を初めて提唱した心理学者としても有名です。意識が外の世界か・自分の内面に向くかどうかということです。外向性と内向性の好みはしばしば態度*と呼ばれます。

*心理学の専門用語としての「態度
→人間の行動の背景にある対象への感情や評価的な判断に基づいた心理的な傾向。

そして、4つの心理機能(認知機能)は、外向性(E)と内向性(I)と連動して機能します。つまり、さらに8つに分類することができます。たとえば、外向的な感情機能、つまり、外向的感情(Fe)と表現します。表で示すと以下のようになります↓

思考型(T型)感情型(F型)感覚型(S型)直観型(N型)
外向型(E型)外向的思考(Te)外的的感情(Fe)外向的感覚(Se)外向的直観(Ne)
内向型(I型)内向的思考(Ti)内向的感情(Fi)内向的感覚(Si)内向的直観(Ni)

人は、8種類の心理機能のうち、各々の得意なものを使い、「脅威に満ちている外界と自分とのバランスをとり、世界と折り合いをつけ上手くやっていきます」。詳しくは、以下の記事を参考にしてください↓
以下の記事を読めば、心理機能(認知機能)を深く理解することができます。

また、以下の書籍では8つの心理機能について大変わかりやすく解説しているので、おすすめです。ユングの著書「タイプ論(Psychological Types)」が難しくてわからないという方にもおすすめです。

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長所は短所の裏返し

そして、ほとんどの人にとって、全ての心理機能を同じように使いこなすことは困難です。得意な心理機能・苦手な心理機能は人によって異なります。人は、第一機能(主機能)と呼ばれる心理機能を信頼していつも使っているので、基本的にはそればかりが得意になります。しかし、長所は短所の裏返しでもあります。つまり、長所と短所はペアになっていると考えれば理解がはかどるでしょう。

例えば、「計画通り着々とこなすことが得意」だが、「突然のアクシンデントに臨機応変に対応していくことは苦手」といった具合です(その逆もしかりです)。また、利き手と利き手でない関係とも酷似しています。利き手を使うのは得意なためいつも使うので、さらに得意になります。一方、利き手の逆の手はいつまでも使わず、不得意なまま放置されがちです。

それと同じ構造が心理機能にも存在します。つまり、「その心理機能が得意ならば、この心理機能は苦手」といったような心理機能のペアというべき組み合わせがあります。参考 心理機能(認知機能)の対をなすペア

それでは、心理機能のペアについてみていきましょう。まず、以下の「心理機能のペア」をクリックしてみてください↓

心理機能のペア (クリックで表示)

これらのペアは、対をなし協力して働きますが、互いに相反する性質があります。 ですが、大抵の場合、どちらか一方のみに活用が偏ってしまいます。 そして、その偏りが性格を特徴づけることになります。 実は、第一の心理機能(=一番得意)は第四の心理機能(=一番苦手)の潜在的な働きに頼っています 実際のところ、この2つの心理機能は協同的に働かすことが望ましいのですが、ほとんどの場合、それは不可能です(なぜなら、機能の働きが正反対であるからです) 。
(*もし、今この文章を読んで理解できなくても、さらに記事を読み進めていけば理解できます)

MBTI 心理機能のペアのバランス

人の心理機能を得意な順に並べたとき、上から順に第一機能〜第四機能と表現します。そして、「第一機能と第四機能」「第二機能と第三機能」が対立し合っています。(=長所と短所の関係)。これを図で表すと以下のようになります↓

MBTI Pタイプ(知覚型)とJタイプ(判断型)の違い

具体的な例として、ENTP(発明家タイプ)心理機能のペアを解説すると、以下のようになります↓

例) ENTP(発明家タイプ)の第一機能と第四機能

例えば、ENTP(発明家タイプ)第一機能(主機能)外向的直観(Ne)で、第四機能は(劣等機能)内向的感覚(Si)

つまり、従来には無いような新しいアイディアを思い付く・探す(=Ne)といったことが得意です。しかし、その代わり、目の前の現実だけに注目してひとつずつ順番にこなしていくこと(=Si)苦手です。

本来ならば、第一機能第四機能の両方を使いこなせることが望ましいですが、大抵の場合はそれは困難です。

以下の図は、ENTP(発明家タイプ)の得意な心理機能を上から順に並べたものです↓

ENTPの心理機能(認知機能)
  1. 外向的直観/Ne
    とても得意/第一機能(優勢機能):未来全体を見渡す能力に優れ、さまざまな可能性や運命を予見することができる。
  2. 内向的思考/Ti
    少し得意/第二機能(補助機能):発言や発見が論理的に意味をなしているか、何が嘘か本当か、事実を確認する責任を担う。
  3. 外向的感情/Fe
    少し苦手/第三機能(代替機能):人を幸福や前向きな気持ちにしたいと考えている。そうでないときは、罵倒、皮肉、優越感の押しつけになりがち。
  4. 内向的感覚/Si
    とても苦手/第四機能(劣勢機能):新しいことに挑戦して失敗することへの不安や恐れを感じている。ルーチンワーク(単純な繰り返し作業)が苦手で出来ない(あるいは嫌がる)。

ENTPの認知軸

  • NeSi:安定した基盤を見つけることができるように、たくさんのアイデアや情報を探す。
  • TiFe:社会を知るために知識を蓄える。

長所ばかり伸ばすと、バランスが崩れる

基本的、人は得意なこと(=第一機能)ばかり使う傾向があります。そうすると、苦手なこと(=第四機能)はさらに使わなくなります。そうすると、バランスが崩れ、問題が生じます。どのような問題が生じるのか説明するために、「第一第四ループ (別名:劣等グリップ)という心理的現象をご紹介します。

第一第四ループ (別名:劣等グリップ)とは、「簡単に説明すると第一機能、もしくは第四機能に著しくバランスが偏って、暴走すること」を意味します。普段は良い形で使っていた第一機能(長所であり得意)が悪い形で表出する・普段使っていなかった第四機能(短所であり不得意)を急に使い出し裏目に出る、といったことが起こります。

第一第四ループ (別名:劣等グリップ)のひとつの例として、以下の表を参考にしてください。 (暴走する機能は、第一機能の場合も、第四機能の場合もあります)

タイプ主機能劣等機能劣等グリップによる影響
ESFJ(社交家タイプ)
ENFJ(協力者タイプ)
Fe(外向的感情)Ti(内向的思考)感情判断によってうまく事が進まない時、
批判的になる。
「そんなものは~に過ぎない」といった
創造的ではない思考
ESTJ(責任者タイプ)
ENTJ(リーダータイプ)
Te(外向的思考)Fi内向的感情)公理によって物事が動かない場合、
自分の価値観を周囲に構わずゴリ押す
ESFP(楽天家タイプ)
ESTP(冒険家タイプ)
Se(外向的感覚)NI(内向的直観)現実主義が強まり、理性を介したものを受け入れなくなる。
「そうなっとるやろがい!」など。
不健全が進行すると妄想にも囚われる。
ENFP(改革者タイプ)
ENTP(発明家タイプ)
Ne(外向的直観)Si(内向的感覚)飽きっぽい性格が行きすぎて、
貧困に苦しむ事になる。
身体的な不調が顕著となる。
ISFP(芸術家タイプ)
INFP(心理学者タイプ)
Fi内向的感情)Te(外向的思考)自分の感情が公理に(主に規則など)
脅かされる様になり、神経衰弱を起こす
ISTP(実務家タイプ)
INTP(研究者タイプ)
Ti(内向的思考)Fe(外向的感情)自分の思考が伝わらない事に憤慨する。
ISFJ(保護者タイプ)
ISTJ(努力家タイプ)
Si(内向的感覚)Ne(外向的直観)悪い想像ばかりに圧倒される様になる。
強迫神経症など。
INFJ(共感者タイプ)
INTJ(戦略家タイプ)
NI(内向的直観)Se(外向的感覚)外的な情報と内界にて導き出した
可能性との摩擦によって苦しむ

上記の表は、キャラクター性格診断スレまとめ Wiki劣等グリップについて』より引用及び筆者による改変したもの

なぜこのような現象が起こるのでしょうか? それは第一機能(主要機能)と第四機能(劣等機能)が、ペアでありながら反対の機能を持つ( =第一機能を第四機能が補佐するよう、ペアとして協力して働くが、互いに相反する性質がある)ことが原因で起こります。

バランスを取れば最高の働きをするのに、通常はどちらか一方の機能の使用に偏ってしまう(第一機能の場合もあれば第四機能の場合もある)ことから起こります。

反対でありながらペア

反対でありながらペア」とはどういうことかさらに詳しく説明をします。すでに述べたように、以下の心理機能がペアとなっています↓

どうしてこれらのペアは反対であるのか理解するために、まず、以下の説明をご覧ください↓

  1. Ne(外向的直観=”目の前の現実以外を見て”既存にない選択肢を探す)
     ⇕
    Si(内向的感覚=”目の前の現実だけを見て”既存の選択を続行する)
  2. Ni(内向的直観=過去から未来への物事の変化を感じ、それから行く末を予想する)
     ⇕
    Se(外向的感覚=今まさに物理的に目の前で起こっていることを確認すること)
  3. Te(外向的思考=何でも良いから効率的に改善・拡大を繰り返す)
     ⇕
    Fi(内向的感情=自分自身の基準にこだわりを持ち、何かがその基準を満たすか吟味する)
  4. Ti(内向的思考=物事の真偽やメカニズムを明らかにする)
     ⇕
    Fe(外向的感情=何が正しいかや、どうするべきかを言い争うことよりも、とにかく人間の和を大事にする)

-制作:ナルキン(Narukin)=Naru Honda(本田成)
ググってね!

上記を読んで分かるように、心理機能の2対のペアは、2つ同時に使うことができません。いわゆる二律背反、ジレンマ(右と左を同時に向けないこと)となっています。これは簡単に理解可能でしょう(Niは難しいかもしれませんので、こちらを別途参照してください)

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この記事を書いた人
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