仕事の成果に重要な性格特性は、ビッグファイブという世界的に信頼されている性格診断の調査結果より判明しています。さらに、ビッグファイブの5つの性格特性のうち4つは、16タイプ心理学(MBTI)の心理機能と相関していることも判明してます。
ビッグファイブの5つの性格特性(因子)の解説書←タップ
- 神経症傾向:落ち込みやすいなど感情面・情緒面で不安定な傾向。ネガティブな気分になりやすい。
- MBTIとの関係:MBTIではこの因子は測定されない
- 高得点:ストレスを受けやすい、衝動的・心配性である。 キーワード:不安、イライラ、うつ、自尊心が低い
- 低得点:ストレスに強く、情緒的に安定している
この性質(高得点のとき)の…- プラス面:警戒、努力できる
- マイナス面:不安、うつになりやすい
- 生物学的メカニズム:脅威への反応(扁桃および大脳辺緑系、セロトニン)
- 外向性(E):自分の関心や勢力が他人や物に向けられる。ポジティブな気分になりやすい。
- MBTIとの関係:高得点だと外向型(E型)、低得点だと内向型(I型)
- 高得点(外向的/E):社交的で物事に熱中する。 キーワード:積極的、社交的、活動的、冒険好き、明るい
- 低得点(内向的/I):よそよそしく物静かである
この性質(高得点のとき)の…- プラス面:報酬を求め手に入れる意欲が高くチャレンジできる
- マイナス面:自らを危険に晒すことが多い。安定した関係を築きづらい
- 生物学的メカニズム:報酬への反応(中脳ドーパミン報酬システム)
- 開放性(N):文化的、美的、知的な新たな経験の受け入れやすさ。心が開かれている
- MBTIとの関係:高得点だと直観型(N型)、低得点だと感覚型(S型)
- 高得点(直観/N):独創性・創造性に富んでいる、一風変わっている。美しいもの、知的なものに触れてみたい、探求・体験してみたい。 キーワード:好奇心、想像力、審美眼、幅広い興味
- 低得点(感覚/S):現実的に考える、伝統にこだわる
この性質(高得点のとき)の…- プラス面:芸術的感受性が高く、拡散的思考ができる
- マイナス面:異常な信念を持ちやすく、精神病傾向がある
- 生物学的メカニズム:心の連想の広がり
- 協調性(F):自分のことではなく人のことを思って行動できる
- MBTIとの関係:高得点だと感情型(F型)、低得点だと思考型(T型)
- 高得点(感情/F):人を信頼しやすく、共感性が高い。 キーワード:思いやりがあり相手を信頼する寛大さ、利他主義、優しさ、従順さ、慎み深さ
- 低得点(思考/T):非協力的で、敵対心が強い
この性質(高得点のとき)の…- プラス面:人間関係を潤滑にできたり社会全体が安定する
- マイナス面:(相手に配慮しすぎて)自分の利益や取り分が減る
- 生物学的メカニズム:他者への配慮(心の理論、共感要素)
- 誠実性(判断機能が強い*):目標に向かい計画を立て、自分を律しながら、諦めずに責任感を持ちつつ勤勉に努力できる
- MBTIとの関係:高得点だと判断機能が強い、低得点だと知覚機能が強い
- 高得点(判断機能が強い):有能で自己管理ができる。 キーワード:自己規律、粘り強さ、熟慮、忍耐、根性、熟慮、達成努力
- 低得点(知覚機能が強い):不注意が多く衝動的である。
この性質(高得点のとき)の…- プラス面:計画を立て、それに沿って自分を規律でき、目的を達成しやすい
- マイナス面:その場その場の状況に応じて臨機応変に行動できず融通が効かない
- 生物学的メカニズム:反応抑制(背外側前頭皮質)
*判断機能が強いとは第一機能が思考型(T型)または感情型(F型)、知覚機能が強いとは第一機能が直観型(N型)または感覚型(S型)ということである。
ビッグファイブの5つの性格特性(因子)の下位特性一覧表←タップ
神経症傾向↓
低 | 高 | |||
説明 | 言葉 | 下位特性 | 言葉 | 説明 |
あまり怒ることはない。 | 温和 | 怒り | 激情的 | 特に物事が思ったように進まないときに、 激しく感情が高ぶる。 |
穏やかで自信がある傾向がある。 | 自信がある | 不安 | 心配性 | 起こるかもしれないことを いろいろ心配しがちである。 |
自分に大体満足している。 | 満足 | 憂うつ | 悲観的 | おもしろくないことを頻繁に考える。 |
欲望は特に強くなく、 欲望を制御できる。 | 自制心がある | 利己的 | 快楽主義 | 欲望を強く感じ、欲望に誘惑されやすい。 |
当惑することはほとんどなく、 大抵の場合は自信にあふれている。 | 自信に満ちた | 自意識過剰 | 自己を意識する | 人が自分をどう思うかに敏感である。 |
予期しないことにも落ち着いて効果的に対処する。 | プレッシャーに強い | 傷つきやすい | 低ストレス耐性 | ストレスの多い状況に負けやすい。 |
外向性↓
低 | 高 | |||
説明 | 言葉 | 下位特性 | 言葉 | 説明 |
ゆったりしたペースの生活が好き。 | のんびり | 活発度 | 精力的 | スケジュールに予定が多く埋まっていて忙しい状態を好む。 |
特にグループの中では、 話すより聞くほうが好き。 | 控えめ | 自己主張 | 強い自己主張 | 意見をはっきり述べ、場を支配する。 グループを先導することに満足を覚える。 |
いつも真面目で、冗談をあまり言わない。 | 険しい | 明朗性 | 陽気 | 楽しい人で、その楽しさを人と分かち合う。 |
静かで、穏やかで、安全なことを好む。 | 平穏を求める | 刺激希求性 | 刺激を求める | リスクを負うことに興奮を覚え、 いろいろ起こらないと退屈に感じる。 |
内向的で、人と打ち解けない。 | 遠慮がち | 親しみやすさ | 外向性 | すぐに友達ができ、人といると満足する。 |
自分に時間を使いたいと強く思う。 | 独立心が強い | 社交性 | 付き合い上手 | 人と一緒にいることを楽しむ。 |
開放性↓
低 | 高 | |||
説明 | 言葉 | 下位特性 | 言葉 | 説明 |
よく知っているルーチンを快適に感じ、 そこからの逸脱を好まない。 | 着実 | 冒険 | 冒険的 | 新しい経験を熱望している。 |
ほとんどの人に比べて芸術的活動や 創造的活動への興味が薄い。 | 芸術に無関心 | 芸術的興味 | 芸術の鑑賞眼がある | 美しいものが好きで、 創造的経験を求めている。 |
自分の感情について考えたり、 感情を表に出すことがほとんどない。 | 冷静 | 情動性 | 感情に自覚的 | 自分の感情を自覚していて、 感情の表し方を知っている。 |
想像よりも事実を優先する。 | 地に足の着いた | 想像力 | 空想的 | 豊かな想像力を持っている。 |
世界をそのまま捉えることを好み、 抽象的な考えをすることはめったにない。 | 具象 | 知性 | 哲学的 | 新しい考えに対してオープンであり、 興味があり、もっと知りたいと望む。 |
伝統に従って安定を 維持することを好む。 | 権力を尊重 | 自由主義 | 権力に対して挑戦的 | 権力や伝統的価値に挑戦して 変化をもたらしたいと思っている。 |
協調性↓
低 | 高 | |||
説明 | 言葉 | 下位特性 | 言葉 | 説明 |
人のために時間を使うより、自分のことをしたい。 | 自己中心的 | 利他主義 | 利他的 | 人を助けることで充実感を味わい、 人のために尽くす。 |
人への反論を避けない。 | 強情 | 協調性 | 寛容 | 進んで対立を避けようとする。 |
自己を敬愛し、自分に満足している。 | 高慢 | 謙虚さ | 慎み深い | 注目されると落ち着かない。 |
目的のためにはあらゆる手段を使う。 | 不義・不道徳 | 道徳性 | 不屈 | 出世のために人を利用するのは正しくないと考える。 |
人は、一般的に他人に依存するのではなく、 自分自身でなすべきだと考える。 | 冷酷 | 共感性 | 親身 | 人の気持ちを感じ、思いやりがある。 |
人の意図を警戒し、簡単には信用しない。 | 人を警戒する | 信用性 | 人を信じる | 人の善意を信じ、簡単に人を信用する。 |
誠実性↓
低 | 高 | |||
説明 | 言葉 | 下位特性 | 言葉 | 説明 |
自分の達成したレベルに満足しており、 野心的な目標を設定する必要を感じない。 | 満足 | 達成努力 | 意欲的 | 自分に高い目標を設定し、 その達成のために 真剣に取り組む。 |
決断に慎重で時間を費やすより、 すぐに実行する。 | 大胆 | 注意深さ | 慎重 | 決断する前に注意深く考え抜く。 |
規則や義務は無視して、やりたいことをやる。 | 気楽 | 忠実さ | 従順 | 規則や義務が不都合であってもまじめに守る。 |
日常生活で組織のために時間を多く取らない。 | 非組織的 | 秩序性 | 組織的 | 生活の中で組織構造の必要性を強く感じる。 |
長期間、むずかしいことを続けられない。 | 中断 | 自制力 | 持続 | きついことにも立ち向かってあきらめない。 |
自分の目標達成能力を疑うことが多い。 | 自信がない | 自己効力感 | 自信がある | 取り組んだことには成功できると感じる。 |
↑表:16タイプ(≒MBTI)とビックファイブの相関関係↑
↑表:心理機能(認知機能)とビックファイブの相関関係↑
多くの研究からビッグファイブの5因子と仕事の成果との相関が判明しており、相関係数(関係の強さ)を高い順に並べると以下のようになっています。(数値が1に近いほど密接な関係があると言える)
- 誠実性:0.22 ←仕事を成し遂げるのに飛び抜けて重要
- 外向性:0.13←営業職、管理職などで特に重要
- 神経症傾向:0.08
- 協調性:0.07
- 開放性:0.04
誠実性は表「16タイプ(≒MBTI)とビックファイブの相関関係」「心理機能(認知機能)とビックファイブの相関関係」の誠実性の高さを見比べると分かるように、第一機能(優勢機能)が判断機能のタイプの方が誠実性は高くなっています(⇔知覚機能だと誠実性は低い)。
例えば、外向的感情(Fe)が第一機能であるENFJとESFJや
内向的感情(Fi)が第一機能であるINFPとISFPは、「表:16タイプ(≒MBTI)とビックファイブの相関関係」を見るとに誠実性の相関が高くなっていることがわかります。
※タイプの文字に含まれるJやPとは関係ないことに注意!
誠実性とは「目標に向かい計画を立て、自分を律しながら、諦めずに責任感を持ちつつ勤勉に努力できる」因子のことです。より平たく言えば「真面目に粘り強くコツコツがんばる」性質のことです。仕事のパフォーマンス(成果)を出すのに最重要な因子(特性)というのも納得できるのではないでしょうか? 途中で放り投げてしまうようでは何もできないからです。
また、次に重要な因子である外向性ですが、外向性が高いと仕事の成果が高くなるのは、人と人の交流が大事な職業・職種では当たり前と言えるでしょう。
誠実性と長寿の関係
実は、誠実性が高いことは、仕事のパフォーマンス(成果)を出すことに最も重要というだけではありません。なんと、寿命に最も相関のある因子が誠実性です。つまり、誠実性が高いと長寿になるのです。誠実性が高いと「夜更かしをしすぎることなく、就寝前に歯磨きしたりする」ことが容易に予測できるので健康になりやすく、これは当然でしょう。また。誠実性が高いと車の運転中にスピードを出しすぎないよう自分を律することもできるでしょう。
他に持ち合わせていると長寿になることが判明している因子は、「開放性」と「協調性」です。逆に、残念ながら「神経症傾向」が強いと短命になってしまいます。神経症傾向の下位特性(ファセット)は「不安・怒り・憂鬱・傷つきやすい」等ですから、これでは短命になるのも最もです。逆に言えば、昔から言われているように「楽天的に考え、ストレスを貯めない生活」を送ることが重要だと言えるでしょう。
誠実性は伸ばすことはできるのか
では、16タイプ性格診断において、誠実性が低く、協調性も低く、神経症傾向が高いとどうしようもないでしょうか? それは単に、現時点で他のタイプと比較しての話です。実は、イリノイ大学での研究により、歳をとるにつれ、誠実性や協調性は高くなり(若い時よりも真面目にコツコツと頑張れるようになり他人のことを思いやれるようになる)、神経症傾向は低くなる(不安や怒り、イライラを若い時ほど感じなくなり感情が安定する)ことが判明しています。ですから、単純に考えると、若いときに比べ仕事もできるようになり、自然と長寿になるようになるのです。
もちろん、これは単に集団の平均を調べた結果ですから、本当に大事なのは普段から誠実性を高めたり(真面目にコツコツとがんばったり)、神経症傾向を無くしたり(なるべくストレスをためないような環境にいたり楽天的に考えることを心掛ける)することが大切でしょう。心理学に言えることはここまでで、あとは本人次第なのです。
そうそう、いくつかの研究より、何事も自分次第と考える方が賃金が高くなることも研究で明らかとなっています。ですから、ここは思い切って「一度の人生、何事も自分次第!」と捉えてチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
コメント